
このアードベッグ、偽物です(SUERC) source : thespiritsbusiness.com
ウイスキーへの投資や分析、売買仲介などを行う英レア・ウイスキー101(Rare Whisky 101)は、オークションや個人収集家など全て異なる経路から無作為に入手したオールドボトル55本の中身をスコットランド大学連合環境研究センター(Scottish Universities Environmental Research Center / SUERC)と共同で調査した結果、55本中21本が明らかな偽物、もしくはラベルの記載とは異なる蒸溜年代の物だったと発表した。
年代特定には原料の大麦が生育中に吸収した炭素14を利用する放射能性炭素年代測定が用いられており、SUERCによれば核実験などにより大気中に存在する炭素14が増加した1950年代以降の物であれば誤差2〜3年の精度で、それ以前の物であればこれよりもやや大きな誤差での特定が可能だという。
今回調査された55本には「アードベッグ 1885」他、19世紀の蒸溜だとされるシングル・モルト・ウイスキー10本が含まれていたものの、これら10本にはいずれも偽物だという判定が下された。
レア・ウイスキー101の設立者デビッド・ロバートソン(David Robertson)氏は「19世紀以前の物だとされるウイスキー全て、また20世紀の物についても多くの場合、それが立証されていない限りは原則偽物として扱うべき」だとしている。
近年のウイスキーブームと共に希少なウイスキーの市場価格は上昇の一途を辿っており、今年10月には「マッカラン 1926 60年 ヴァレリオ・アダミ」がおよそ1億2,500万円で、続く11月には「マッカラン 1926 60年 マイケル・ディロン」がおよそ1億7,300万円(いずれも落札時のレート)で、それぞれオークションで取引された。
一方で今回のようなフェイク・ボトルの問題も各国で顕在化し始めており、昨年11月には同年7月にスイスのホテルで中国人観光客に提供された1杯110万円の「マッカラン 1878」が、レア・ウイスキー101の調査で偽物だったと判明した。
この他アメリカでは「パピー・ヴァン・ウィンクル」のボトルを偽造した男が昨年起訴されており、また日本では偽の「響 30年」をメルカリで販売した男2人が今年の8月に逮捕されている。
ロバートソン氏は、こういった問題は「レアボトルの価格の上昇が続く限り、拡大し続けるだろう」と見ている。
今回偽物だと判定された21本が全て本物であると仮定した場合、その市場価値の合計は63万5千ポンド、およそ9,000万円にものぼるという。
レア・ウイスキー101では、現在二次流通市場及び公開されているコレクションの中に存在するレアボトルの内、価格にしておよそ4,100万ポンド、約57億5千万円分が偽物だと推定している。
Third of Rare Scotch Whiskies Tested Found to be Fake | BBC
Fake Whisky ‘Infiltrating All Routes to Market’ | The Spirits Business