Strathisla Distillery
スコットランド・バンフシャー、キースに位置する蒸溜所。スペイサイド地域に分類される。
現存するスコットランドの蒸溜所では最古参の1つ。
“Strathisla”はデブロン川(River Deveron)からアイラ川(River Isla)が分岐する一帯の地域名で、「アイラ川が流れる(広い)谷」の意。(“Glen”は深く狭い谷を、”Strath”は浅く広い谷を意味するゲール語から)
歴史
1786年 Alexander MilneとGeorge Taylorが修道院付属の醸造所を改装して蒸溜所を設立、ライセンスを取得する。設立当初の蒸溜所名はミルタウン(Milltown)だが、直後にミルトン(Milton)に改名している。
1823年 MacDonald Ingram & Co.が蒸溜所を買収。
1830年 ウィリアム・ロングモア(William Longmore)が蒸溜所を取得
1870年 蒸溜所名をストラスアイラに変更。
1879年 火災より蒸溜所が損傷、改築する。
1880年 ウィリアムが引退し、義理の息子ジョン・ゲデス・ブラウン(John Geddes-Brown)が後継となる。William Longmore & Co.を組織。
1890年 蒸溜所名を再度ミルトンとする。
1940年 ジェイ・ポメロイ(Jay Pomeroy)がウィリアム・ロングモアのオーナーとなるが、ポメロイは脱税の容疑で投獄される。
1949年 ウィリアム・ロングモア破産。
1950年 蒸溜所は競売にかけられ、加シーグラム(Seagram)が前年に買収したシーバス・ブラザーズ(Chivas Brothers)を通じて71,000ポンドで蒸溜所を取得する。
1951年 蒸溜所名を再度ストラスアイラへ。
1965年 スチルを4基に増設。
2001年 ペルノ・リカール(Pernod Ricard)とディアジオ(Diageo)がシーグラムのスピリッツ部門を買収。ストラスアイラはペルノ・リカール傘下へ。
スコットランド最古の蒸溜所は?
上記の通りストラスアイラは1786年に蒸溜免許を取得しており、この記録は現存するスコットランドの蒸溜所の中では最も古い。
ライセンス取得以前、つまり密造時代を含めると、グレンタレット蒸溜所が1775年(ライセンス取得は1818年)、ボウモア蒸溜所が1779年(同1816年)の創業を主張している他、1795年にライセンスを取得しているグレン・ギリー蒸溜所と同じ場所で蒸溜が開始された事を告げる1785年の新聞記事が存在する。
ただし18世紀後半のウイスキー生産(特に密造酒)については不透明な部分が多く、グレンタレットは1775年にホッシュ蒸溜所として設立されたとしているのだが、密造酒業者がなぜ堂々と蒸溜所に名前まで付けて活動していたのかという疑問が残り、ボウモアに至っては密造時代の活動を裏付ける資料は存在しない。
グレン・ギリーについてはライセンス取得以前の創業を蒸溜所自身が主張しているわけではないが、1785年の新聞記事がグレン・ギリーの事を指すのかどうかに関わらず、そういった密造酒業者の話が新聞記事として公の物になっている背景はホッシュ蒸溜所と同様に不明だ。
今後の研究次第では18世紀以前のスコットランドの蒸溜所の歴史は大きく書き換わる可能性がある。
生産
1950年にシーバス・ブラザーズ傘下となってからはシーバス・リーガルのキーモルトを供給する役割を担っている。
また、1970年から短期間クレイグダフ(Craigduff)という名でヘビリー・ピーテッドのウイスキーを生産していた。
現在のアルコール生産能力は年間220万リットル。4基のスチルを備える。